赤紙を喜ぶヒロイン|朝ドラ「カーネーション」戦争の描き方

朝ドラ「カーネーション」の再放送が、平日午後にされています。

2011年の放送当時も観ていました。脚本、そして主役の尾野真千子さんがとても魅力的で、綾野剛さんが大ブレークした作品でもありました。

しかし朝の忙しい時間帯の放送。詳細はあまり覚えていないので、今回は録画して観ることにしました。

そして昨日。第8週・49話。
ヒロイン糸子が、幼馴染みの勘助に赤紙が来たことを喜んでいた・・・。

正直、びっくりしました。

「何が嫌やねん、名誉なことやないか。兵隊に選ばれるなんて」

「カーネーション」は、朝ドラの中でも、ヒロインの戦争嫌悪・反戦色が比較的濃い作品と言われています。

時は昭和12(1937)年。

支那事変勃発による徴兵(赤紙)のシーンですが、この時点で糸子は戦争への反戦意識がほとんどなかったようにみえます。

勘助に気を遣って明るく振舞うということではなく、「戦争に行くのが何で嫌なの?」と本気で思っています。

人生の中に戦争が当たり前にある時代

ヒロインのモデルであるファッションデザイナー・小篠綾子さんは、大正2年(1913)生まれ。

父親が30歳の時に生まれた子と仮定すると、父は明治16(1883)年頃の生まれとなります。ドラマではこの父親の日露戦争体験が、明るい記憶として何度か語られます(当時の制度では20歳で兵役)。

忘れがちですが、たかだか二代~三代程度さかのぼった祖父母や曾祖父母の時代は、日常の中に戦争が当たり前のようにある時代でした。

明治27(1894)年 日清戦争勃発
明治37(1904)年 日露戦争勃発
昭和12(1937)年 支那事変勃発

この時代の人たちは、生涯に何度も戦争を体験しています。
現代の我々には想像がつかないことです。

「(軍隊には)鬼みたいに怖いやつがいて、そいつに毎日殴られんやで」

ドラマの中では、赤紙が来て、落ち込みながら「嫌やなあ」と言う勘助に、糸子が言います。

「何が嫌やねん、名誉なことやないか。兵隊に選ばれるなんて」

「(戦争行っても)死なへんわ。うちのお父ちゃんも前に戦争行ったけど、帰ってきてるやんか」

日清戦争日露戦争と続けて勝利をおさめた日本にあって、支那事変もまた勝利するだろうという楽観的な考えが、普通の庶民の感覚だったのかもしれません。

勘助が言います。
「(軍隊には)鬼みたいに怖いやつがいて、そいつに毎日殴られんやで」

ここで思い出したことがあります。
以前、ある勉強会で日本人のトラウマに関する1つの説を聞いて、衝撃を受けたことがありました。

日本人の、戦争のトラウマとは

その説とは、

「日本人の集合意識として、戦争のトラウマがある。それは戦争自体や米国に対してではなく、日本軍や、毎日殴られ続けた上官に対しての強い憎しみである。これを克服できないと、日本人の意識改革は成し得ないのではないか」

というような内容でした。

この説がどのくらい受け入れられるものかはわかりませんが、「なるほど、そうかもしれない」と思いました。

軍隊に行き、生還された方々の話しや小説、映画などでも、殴られることのエピソードは枚挙にいとまがありません。

日本人のDNAにそのような、より弱い者に向かってなされる暴力的なものが組み込まれているのだろうか、と怖くなったことを覚えています。

現在騒がれている日大アメフト部の軍隊を思わせるような思想・体制もまた、それかもしれません。

日清・日露戦争勝利が庶民の心にどう影響しているか

朝ドラは太平洋戦争をまたぐ時代の作品が多いですが、作品ごとにヒロインの反戦に対する意識・姿勢は違います。

この時点では、糸子はこう言っています。

「勘助がそんなしみったれたことばかり言うさかい、出生は名誉なこっちゃのに、なんやかわいそうに思えてきて、心の底から祝っちゃう気になりませんでした」

他の人たちは心の底から祝っている、ということが暗に伺えます。

そして、皆、普通に明るく寛助を送り出します。勘助の実母以外は。

日本が太平洋戦争に突入していく過程は、軍とメディアによる徹底した思想や言論統制・誘導などが大きいと言われています。

この日の放送では、糸子の父親や近所の人たちが、実に明るくわいわいと日露戦争の体験談を語ります。

そのシーンを見て、日清・日露戦争に勝利した体験が、一般庶民の戦争に対する意識に少なからず影響していたかもしれないと、はじめて思いました。

反戦か迎合か、あるいは洗脳か。庶民はどう変わっていくのか。

「カーネーション」は、次第に反戦色が濃くなり、そして勘助はじめ、ドラマ前半の登場人物の多くが戦死していきます。

糸子の心も言動も、反戦の方向に大きく変わっていきます。

「カーネーション」は、放送批評懇談会のギャラクシー賞にも選ばれた、非常に評価の高い作品です。

ヒロイン、そして周りの人々の心の機微を、丁寧に見てみたいと思います。

 

☆今日の私は10年後の私より10歳若い☆

この記事を書いた人

ひいらぎ

ひいらぎ

"ひいらぎ"と申します。

東京在住。

小さい頃からSF、タイムトラベル、異次元、吸血鬼、輪廻転生など、見えない世界、異質な世界にとても興味がありました。

現在は、古神道を学びながら、全国の神社をご参拝しています。