<古神道の勉強をしながら、全国の神社をご参拝しています>
東京虎ノ門駅のほぼ真上に位置する「虎ノ門 金刀比羅宮」。
桜田通りに突如現れる大きな鳥居に、驚く人もいるかもしれません。
御祭神は大物主神(おおものぬしのかみ)と、第75代・崇徳天皇。
主たる御神徳は海上守護です。
しかし、しっかりご参拝すると、金運と人脈運のご利益を頂けるように思われます。
虎ノ門の金刀比羅宮は、こんぴらさんの分社ではなく、丸亀藩の邸内社。神様は同じですが、神社としては関係しません
こちらの神社、意外なことに、香川県の金刀比羅宮(いわゆる、こんぴらさんの本宮)の分社ではありません。
分社は、水道橋にある「金刀比羅宮 東京分社」です。
では何かというと、丸亀藩(讃岐国)の藩邸内に作られた、邸内社です。
祀られている神様は同じですが、神社としては香川県にある金刀比羅宮・本宮の直轄ではないということです。
参勤交代により、東京に勧請された神様
1635年、徳川家光によって参勤交代が制度化されました。
丸亀藩も、現在の芝(三田)に藩邸を構えます。
江戸に住む間は地元の神様にご参拝できないので、江戸屋敷の中でもご参拝できるようにと、香川の本宮からご分霊を持ってきて作った(勧請といいます)のが、虎ノ門の金刀比羅宮です。
その後、御社殿は現在の虎ノ門へと移されます(遷座といいます)。
虎ノ門は江戸の裏鬼門。よって金刀比羅宮は北向きに建てられている
神社は通常、東向きか南向きに建てられます。
しかしこちらの社殿は、北向きに建てられています。
理由は、虎ノ門が江戸城の裏鬼門にあたるためです。
魔を封じるため、徳川幕府が江戸城、及び江戸の町を徹底的に風水を取り入れて作ったことはよく知られていますが、こうした神社の向きは、その典型的なものです。
銅鳥居に彫刻された北の守護神・玄武。上ではなく下に配置されているのは、方角を示すため
お社のすぐ手前に銅の鳥居があります。
この鳥居には、四方の守護神である「四神」、すなわち北の玄武(亀)、東の青龍、南の朱雀、西の白虎の彫刻が施されています。
それを見ると、北を守護する玄武が、鳥居の左足の下方に配置されています。
つまり、その方角が北であることを意味しています。
鳥居の位置が変? 2004(H16)年、「虎ノ門琴平タワー」の完成によって、初めて金刀比羅宮は外から見える神社になった
現在、こちらの神社は、「虎ノ門琴平タワー」という26階建ての超高層ビルの1階が、参道になっています。
桜田通りに面して建っている一の鳥居と社殿をつなぐ参道は、途中でうねうねとカーブします。
参道は神様のご神気が通る道なので、通常はまっすぐな道ですが、土地の問題上それができない場合もあります。
それにしてもうねりすぎです。
気になったので、ご神職さんに伺ってみました。
ご神職さんによると、まず、桜田門の鳥居は一の鳥居ではなく、おそらく昔は、横道(脇道)の鳥居であったらしいとのこと。
すると、そう広大ではない邸内において、社殿の前にある銅鳥居が一の鳥居であっただろうと思われます。
そして、「虎ノ門琴平タワー」竣工以前の、「虎門琴平会館ビル」時代は、神社は四方を囲まれ、外からは全く見えなかったそうです。
鳥居だけが見えていたので、周囲の人は「中に何があるんだろう」と思っていたとのこと。
推測ですが、「虎門琴平会館ビル」が竣工された1965年、すなわち高度成長期時代、このあたりはビルの建設ラッシュとなり、神社への配慮や景観を重んじるようなことはなかったよと思われます。
その結果、神社はビルの間に埋もれていった。
あるいは、囲われてしまった。
この囲われてしまった神社の社殿を、外から誰でも見えるようにしたいと、2004年、同ビルの建て替えにあたって、設計に工夫が施されたとのことです。
そして出来たのが、現在の「虎ノ門琴平タワー」。
四方に道が通り抜けていて、桜田通りからはもちろん、どの方向からも神社が見えるようになっています。
太平洋戦争によって虎ノ門は焼け野原になり、神社の資料も全て消失
そもそも、虎ノ門一体は太平洋戦争で焼け野原になっています。
ご神職さんによると、その際、金刀比羅宮とその末社(結神社、喜代住稲荷神社)も完全に消失し、文献、資料、宝物など、一切が失われたそうです。
よって、昔のことはほとんどわからず、神社によくある宝物殿も、ここにはないそうです。
戦争による消失、昭和の乱開発、そして平成の建て替え。
その果ての工夫が、現在の虎ノ門金刀比羅宮の見取りになっているということです。
神様のパワーは真上に向かって抜けています
かといって、やはりこの神社は四方を高層ビルに囲まれています。
社殿から出ている強いご神気は、上に向かう状況になっています。
多分実際、そのように、気が動いていると思います。
人脈と金運を後押し
こんぴらさんといえば、第一に海上守護の御神徳を思い浮かべます。
しかし虎ノ門という立地において、こちらの神社は人脈運と金運を後押ししてくださっているように感じます。
「ことひら」は、「事平」であり「事開」
すなわち、困難な状況を収めたり、開いたりという意味もあります。
長く閉ざされていたご神気が一気に解放され、上昇へ吹き上げています。
出世の階段を擁する愛宕神社も近いので、しっかり両方をご参拝するのが良いと感じます。