神田松之丞の講談を聴きに行くー講談に新風を起こす34歳。腕を切り落とされる左甚五郎の話は、面白くて暗くて怖くてびっくりした

神田松之丞さん、ご存知ですか。

今、講談界で最もチケットがとれないと言われている講談師です。

本人の語りによると、「講釈師が紀伊国屋寄席に出るのはとてもありがたいことで、人間国宝・一龍斎貞水(いちりゅうさいていすい)さんと、自分だけ」だそうです。

まぁこれは彼の話しのいわゆる「つかみ」なわけですが、実際、落語家は800人いるのに対し、講談師はわずか80人しかいず、その中で一番年下なのが、松之丞さんだそうです。

神田松之丞さんを知ったのは、昨年放送されたNHK「スイッチインタビュー」という番組。
クリエーター・いとうせいこうさんと松之丞さんの対談でした。

松之丞さんが語るエピソードや演出の面白さと、ちらっと映る講釈の迫力。そして何より本人が惜しげもなく醸し出している憂いを含んだ暗さが凄まじい。凄まじい闇を、画面を通してこれでもかというほどに押してきます。

明るいいとうせいこうさんが、懇談に対する独自の見解と質問力で松之丞さんをしゃべらせ、講談に、というより神田松之丞に、十分に興味を持たせてくれました。

「うおーっ、松之丞見に行きたい!」

すぐさまググリましたが、チケットはどれも完売。しかし運良く「まつまつ堂 神田松之丞 勉強会」という会に当日券があるのを知り、日暮里まで行って窓口に並びました。

「講談って、そもそも何?」というくらい何も知らずに行ったのですが、「何だこれー!」というくらい面白かった。

出し物は、「鼓ケ滝」「トメ」「左甚五郎 陽明門の間違い」の3本でした。

「鼓ケ滝」は、西行が夢のなかで和歌の神様に慢心を諫められる話しで、聴いたあとは爽やか。

「トメ」は松之丞さんのオリジナル。真夜中に爺さんが婆さんを起こして、「俺、何点だ?」と聞く、こっけいな夫婦のやりとり。

ここまでは普通に面白可笑しく聴けていたのですが、最後の「左甚五郎 陽明門の間違い」は、怖かった。本当に怖かった。

江戸時代の伝説的彫刻師・左甚五郎が東照宮の陽明門を彫った際、地元の大工にその腕前を嫉妬され、右腕を切り落とされるという話なのだが、ひぇー怖い怖い怖い。リアルな怖さ。

本当に切り落とすの?オチがあるんじゃないの?

話しの明るい展開を期待して聴いていたのだが、オチがないのが講談だそうです。オチがあるのは落語。

ゆえにオチはなく、怖いまま、腕は切り落とされました。

誰が講釈するかによって話しの色合いはもちろん違ってくるのだと思うのだが、この猫背で眼光鋭く、内面の闇を惜しみなくにじみ出している松之丞さんが語ると、本当に闇の世界に引きずり込まれる。

といっても、私は他の講談師さんを全く知らないし、何せこの日が生まれて初めての講談なので、何もわかりません。

でも講談ってもしかしてこういう怖い話ばかりなのだろうかと、帰り道は真剣にそう思いました。

この記事を書いた人

ひいらぎ

ひいらぎ

"ひいらぎ"と申します。

東京在住。

小さい頃からSF、タイムトラベル、異次元、吸血鬼、輪廻転生など、見えない世界、異質な世界にとても興味がありました。

現在は、古神道を学びながら、全国の神社をご参拝しています。